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混迷する日本の社会保障改革(21)


混迷する日本の社会保障改革(21)

<前回より>

財政学が専門で財政制度等審議会委員を長く務める土居丈朗慶応義塾大学教授は、現在のような財政拡大と日本銀行による国債の大量購入が続けば、いずれ金利急騰を抑えられなくなり、経済が大混乱する可能性が高まっていくとの見方を示しています。政府が巨額の国債を発行する中で「日銀はやがて6割、7割を買い取ってしまうかもしれない」とし、国の財政赤字を日銀が従属的に穴埋めする「財政ファイナンス」との見方を払しょくできなくなる可能性を指摘しています。その際「慶応の人間としてはあまり言いたくないが、福沢諭吉先生の肖像の1万円札が紙切れになるかもしれない」と語っています。

2018年末の国債および借入金は1100兆5266億円と過去最高を更新し続けています。債務残高の対国内総生産(GDP)比率は230%超と先進国で最悪な状況です。日銀は13年に量的・質的金融緩和を導入して以来、巨額の国債購入を続け、長期金利を0%程度に誘導しており、昨年9月末時点で日銀の国債保有残高は全体の43%に達しています。

土居教授は、財政出動と日銀の大量国債購入を繰り返せば、最も起こる可能性が高いのは「金利の急騰だ」と説明しています。日銀の国債保有比率はますます高まっていき、買い入れ余地がどんどん減っていることが明白になった時、そのまま継続できる政策でないことに皆が気付き、「いずれ金利を抑制できなくなるかもしれない。それがハードランディングだ」と語っています。
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混迷する日本の社会保障改革(20)


混迷する日本の社会保障改革(20)

<前回より>

2018年11月29日付け日経新聞によると、各国・地域の年金政策を指数化した2018年度の国際ランキングで、日本の年金は持続性への評価が低く、世界の34国・地域の中で29位という評価になっています。ランキングをまとめた米コンサルティング会社マーサーは「公的年金の支給開始年齢の引き上げ」などを日本の対策にあげています。

日本の総合格付けは7段階のうち下から2番目の「D」ランクで、「対処すべき重要な弱点があり、改善しなければ有効性や持続性が疑問視される」と評価されています。特に国の借金や平均寿命、支給開始年齢の関係などを評価する「持続性」が低く、項目別の格付けは最低の「E」ランクでした。マーサージャパンの北野信太郎プリンシパルは「赤字国債で財政を賄う現状では、年金制度がこのまま続くとは言えない」と指摘しています。
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混迷する日本の社会保障改革(19)


混迷する日本の社会保障改革(19)

<前回より>

政府は公的年金の受け取りを始める年齢について、受給者の選択で70歳超に先送りできる制度の検討に入りました。年金の支給開始年齢を遅らせた人は毎月の受給額が増える制度を拡充し、70歳超を選んだ場合はさらに積み増す方針とのことです。

現在の公的年金制度では、受け取り開始年齢は65歳が基準で、受給者の希望に応じて、原則として60〜70歳までの間で選択することができます。受け取り開始を65歳より後にすれば毎月の受給額が増え、前倒しすれば減る仕組みになっていますが、政府は受給開始年齢の上限をいまの70歳から75〜80歳程度に引き上げることを想定しています。

受給開始年齢の引き上げで支給が不要になる分を、その後の受給額上乗せの財源に充てるとのことですが、そんなに事がうまく運ぶとは思えません。国の基礎的財政収支(PB)の対象経費のうち医療や年金などの社会保障関連費用は44%超を占めています。22年から団塊の世代が75歳以上になり始め、医療や介護にかかる費用はさらに膨らむ見通しです。

内閣府の試算では歳出抑制に手を着けなければ、社保費の膨張や物価上昇で国の歳出は18年度の97.7兆円から、25年度に120.5兆円まで膨らみ、その後も自然体のままでは大きく膨張する歳出をどのように抑えていくかを示す必要がありますが、政府は楽観的な経済成長シナリオを描くのみで、少子高齢化の現実に目を背けているとしか思えません。

最低でも国家財政の破綻を回避し、将来世代に禍根を残さないためには、いまの現役世代の皆様は医療費の負担が増え続け、年金支給額が減り続けることを覚悟しなければなりません。人生100年時代、つまり100歳まで現役で働き続ける覚悟が必要な時代が来た、と考えざるを得ません。
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混迷する日本の社会保障改革(18)
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混迷する日本の社会保障改革(18)

<前回より>

今年もいよいよ年の瀬となり、来年の日本経済を展望する時期となりました。来年も日銀の異次元緩和政策と戦後最長となるアベノミクス景気による円安と株高が続く可能性が高いように思いますが、その背後に隠された副作用と財政リスクに十分気をつける必要があると思います。

第一生命経済研究所・首席エコノミストの熊野英生氏によると、来年4月に任期を迎える日銀の黒田総裁が再選された場合、金融引き締めへ向けた出口政策をますます急がなくなり、緩和政策継続の副作用が日本経済を害することになります。具体的には、マイナス金利が銀行などの収益を圧迫することになるため、すでに大手銀行は人員削減を発表しています。また、債券市場は機能を低下させ、年金基金など機関投資家も運用収入の減少に苦しんでいます。

2018年以降も、異次元緩和を延長すれば、より強い副作用で日本経済の屋台骨がぼろぼろになります。黒田総裁は自分が始めた巨大緩和を自分できっちりと終わらせる責任があると言えます。

また、2018年度予算案の概要が明らかになり、一般会計の歳出総額は97.7兆円前後で、17年度当初から0.3兆円程度増えて、過去最大を更新します。総額の3割超を占める社会保障費は医療費や介護費が膨張し、0.5兆円前後増加することになります。国債費を除いた政策経費を、新たな借金に頼らずどれだけ賄えるかを示す「基礎的財政収支」は引き続き約10.4兆円の赤字となります。

国家の健全財政の基準は対GDP比100%以内とされていますが、日本の国債発行額は対GDP比246%となっており、対GDP比が200%を越えるのは、主要先進国の中では有史上例がない状況です。このまま次世代への負担が増え続けていく状況が続けば、年金や医療等の社会保障制度は制度そのものを維持していくことが難しくなり、次世代への禍根を残すことになります。病気やけがをしても実際の治療費の1〜3割のお金を支払えば誰でも治療を受けられる国民皆保険制度は既に瀕死の状態に陥っています。

将来世代に禍根を残さないためには、自分の年金は自分で用意しておくことで国民年金制度に頼らずに生活できるだけの老後の準備を遅くとも30代から始めておくこと、病院などで必要性の低い薬や湿布剤の処方を頼まないといった対応を一人一人の現役世代が心がけることが益々大切な一年になっていくことと思います。

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混迷する日本の社会保障改革(17)
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混迷する日本の社会保障改革(17)

<前回より>

2020年度に基礎的財政収支(PB)を黒字化するという目標が先送りされます。次なる期限はまだ決まっていません。以前から、2020年度の達成実現は無理という意見は根強くありました。2017年度の見通しは18.4兆円の赤字、これを2020年度に8.2兆円の赤字まで減らしたとしても、まだ黒字化までの距離感は途方もなく大きい状況に変わりありません。

2019年10月に2%の消費税率引き上げで5.6兆円の税収増が見込めたとはいえ、それで黒字化は無理です。安倍晋三首相は、そこから少なくとも2兆円を教育などの無償化に流用すると言っています。消費増税分の使途変更というよりも、それ以前にPB赤字幅の縮小がうまく進められなかったという理解が正しいと言えます。

財政リスクなど単なるフィクションにすぎないという見解は根強くあり、現在でも相当の求心力を持っています。但し、そうした見解に便乗して財政再建を放棄した後で、財政リスクが顕在化したときには、オピニオンリーダーたちは何の責任もとらないでしょう。これは危険な構図と言えます。

もしも、財政リスクを映す鏡がなく、どんどんリスクが高まる出来事が起これば、リスクは突然に襲ってくることになります。そのときは、投資家の疑心暗鬼がリスクプレミアムとして加わることになれば、財政破綻が現実化することになります。

衆院選挙も終盤に差し掛かっていますが、与野党ともに国民の人気取り政策と双方の揚げ足を取ることにばかり議論が集中しており、財政健全化に関する議論が全く聞こえてこないことに危機感を感じずにはいられません。

現時点で短期的な財政破綻リスクは低いと思いますが、いまのように財政赤字を垂れ流し続ける状況が続けば、10年後〜20年後の年金や医療等の社会保障制度は目も当てられないような状況になっていることでしょう。ハゲ発言で物議を醸した議員の発言からも見て取れるように、次の選挙に勝つことしか考えられない議員しかおらず、国家百年の計を語れる議員が一人もいない状況ではとても財政健全化は望みようもありません。

1867年の大政奉還から今年で150年、いまの日本の繁栄があるのは国家百年の計のために戦った幕末の志士達の偉業とも言えます。もう一度、日本を洗濯してくれる志士達の出現が望まれますが、、、
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混迷する日本の社会保障改革(16)
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混迷する日本の社会保障改革(16)

<前回より>

政府・与党で大学などの教育費の負担軽減策に充てる「教育国債」の構想が再燃しています。大学卒業後、一定の収入を得たら授業料を「出世払い」で返済する制度と組み合わせ、政府は年内に具体案のとりまとめを目指しています。

首相は「教育無償化」の実現を掲げて、来年度には返済の必要がない給付型奨学金を創設する予定とのことですが、現在の予算の枠内での実現は難しく、新たに巨額の財源が必要となります。もし日本の財政が健全で経済成長も確実なら、単純に赤字国債を発行する選択肢があるが、いまはそんな状況ではありません。

今回の教育国債の構想は、赤字国債の発行額が対GDP比246%まで膨れ上がっている状況において、財政健全化には完全に逆行する動きと言えます。そもそも日本では短大を含めた大学進学率は約8割と高く、これ以上、巨費を投じて大学教育まで無償化を進める必要があるのか、「投資に見合う効果は期待できない」との指摘も多く出ています。

今後も少子高齢化がますます深刻になり、公的年金や医療制度の現状維持さえも難しくなってきている状況において、教育国債よりも優先順位が高いはずの「税と社会保障の一体改革」は手つかずの状態が続いています。5年に渡る日銀の金融緩和政策も目に見える効果は出ておらず、税収も増える見込みがない状況で、次世代への負債だけが増え続けています。

アベノミクスが残した一番大きな功績は、経済成長と財政健全化は両立できないことを証明したということです。そもそも国民の大半がいま以上の経済成長を望んでいるとは思えず、政府の役割は国民が最低限の生活を維持できるための社会保障制度を維持するだけで良いはずです。民間にできることは民間に任せれば良いし、大学を出たところで必ず良い仕事につける保証もありません。国民の血税でワインセラーのある大学キャンパスを建設するなど言語道断です。

日本はもっと小さな政府を目指すべきだと思いますし、国民に人気のある政策ばかりを並べるのではなく、財政健全化のために年金支給開始年齢や医療費を引き上げるなど国民にとって耳の痛い政策も誠実に実行していける政府が求められているのだと思います。
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ムーディーズ、中国と香港の格付けを引き下げ
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ムーディーズ、中国と香港の格付けを引き下げ

5月24日付の日経新聞によると、米格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスが中国の長期国債格付けを引き下げました。共産党と政府が景気下支えを目的に公共投資を積み増すなか、財政の悪化に警鐘を鳴らした形となりました。潜在成長率の低下や地方政府の傘下企業の偶発債務にも懸念を示しています。金融市場への影響は限定的でしたが、政府が着手した国債保有者の拡大を通じた人民元の国際化は出ばなをくじかれた格好となりました。

ムーディーズによる中国の格下げは28年ぶりで、「Aa3(ダブルAマイナスに相当)」から1段階引き下げ、日本やサウジアラビアと同じく最上位から5番目となる「A1(シングルAプラスに相当)」となりました。格下げの理由についてムーディーズは「潜在的な成長率が低下するなかで債務が増え続け、中国の財政面の強さがそがれる」と説明しています。同社は今後5年間で中国の潜在成長率が5%程度まで低下するとみていますが、中国当局による成長目標の引き下げはより緩やかになると分析しています。

株式や為替など金融市場への影響は限定的で、上海総合指数は取引開始後に1.3%安まで下げましたが、最終的には上昇して取引を終えました。元の対ドル相場もほぼ横ばいで、ムーディーズが今後の格付け見通しを「安定的」としたことで、「一段の格下げは避けられる」(大手銀行)との見方が広がっています。

ムーディーズは香港の格付けも「Aa1(ダブルAプラスに相当)」から「Aa2(ダブルAに相当)」に引き下げました。その根拠として(1)香港は中国本土と密接につながっているため、本土の信用状況は香港に影響する(2)「一帯一路」や証券市場の相互乗り入れなど、香港が参画する本土のプロジェクトはますます増えている(3)本土からの貿易・旅行者が香港に占める割合はどんどん高まっている(4)中国が香港の政治機構と政策制定時に関与した証拠がさらに多く見つかれば格付けをさらに引き下げる−を挙げています。これに対し特区政府の陳茂波・財政長官は、本土の融資の質が高いことや「一帯一路」への参加は香港経済全体にとって利益になることなどを挙げ、「ムーディーズの観点は非常に同意できない」と批判しています。
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投信不信 迷うマネー 金融庁批判で「毎月分配」自粛
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投信不信 迷うマネー 金融庁批判で「毎月分配」自粛

5月7日付の日経新聞によると、個人の代表的な資産運用商品である投資信託がパッタリと売れなくなっています。2016年度は14年ぶりに解約と償還額が購入額を上回る資金流出を記録しています。主因は圧倒的な人気を誇った「毎月分配型」の急ブレーキです。長期で資産を形成する投信を増やしたい金融庁と売れる商品を提案できない金融機関のはざまで、行き場を失った個人マネーがさまよっています。

「消費者の真の利益を顧みない生産者の論理が横行している。そんなビジネスを続ける社会的な価値があるのか」。先月、日本証券アナリスト協会が都内で開いた資産運用のセミナーで、金融庁の森信親長官は強い口調で投信業界への批判を展開し、多くの証券関係者が集まった会場は水を打ったように静まり返ったそうです。

運用益を払い戻せば複利効果が得られにくくなるにもかかわらず、世界的な低金利で運用難に直面し、分配金に投資家が払い込んだ元本を充てるファンドが多いのが現状です。分配金が全て元本の投信さえあります。投資家が毎月得る分配金の一部は運用益ではなく自分たちが払ったお金なのです。

神奈川県の40代の主婦は「分配金は精神安定剤。毎月ちゃんと出ていれば安心できる」と話しています。京都市の60代の主婦も「投信は基準価額の変動が大きすぎて心配。元本割れしたとしても毎月分配型以外は買わない」と話しています。個人は長期運用に不安を抱いています。

日本国内ではなぜ「毎月分配型」ばかりが売れていたのか、これは日本の学校で「複利効果」さえも教えてもらえない金融教育の欠如が影響しているように思います。日本人は過去の長期間に渡って労働でこつこつ貯めたお金を銀行の定期預金で運用することが美徳とされてきました。しかし、日本国内のゼロ金利政策の長期化によって、金利のつかなくなった定期預金の一部が毎月分配型投信で運用されてきましたが、毎月の分配金が運用益を下回る投信が多く、結果として多くの毎月分配型投信が元本割れを引き起こしてきました。
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混迷する日本の社会保障改革(15)
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混迷する日本の社会保障改革(15)

<前回より>

内閣府は1月25日の経済財政諮問会議で、中長期の財政試算を示しました。黒字化をめざす2020年度の国と地方の基礎的財政収支は8.3兆円の赤字を見込んでいます。16年度の税収が円高で落ち込んだことで想定が狂い、赤字は昨年7月の前回試算より2.8兆円膨らんでいます。高い成長を想定し、19年10月の消費増税を織り込んでも財政健全化目標の実現は困難です。赤字解消には社会保障の抜本改革も含めた追加策が必要な状況となっています。

安倍晋三首相は黒字化目標の旗は降ろさない方針ですが、道は険しいと言えます。BNPパリバ証券の河野龍太郎氏は「20年度の黒字化は遠のいた。高成長・高インフレを前提とした財政健全化が困難なことが浮き彫りになった」と指摘しています。民間エコノミストはこのままでは目標達成は難しいとみています。

20年度に残る8.3兆円の赤字を消費増税で解消するとすれば、税率を約13%まで引き上げないといけない計算となります。ただ2度増税を延期したため20年度までの消費増税は、すでに予定している19年10月の10%への引き上げに事実上限られます。試算が前提としている19年10月の消費増税も景気の不透明感が強まれば、実現に向けた雲行きも怪しくなりかねず、財政健全化への不安は拭えない状況です。

一方、厚生労働省は1月27日、2017年度の年金額を0.1%引き下げると発表しました。マイナスは3年ぶりで、同日発表された消費者物価指数(CPI)が下落したのを年金額に反映する形となります。国民年金を満額で受け取っている人は16年度と比べ、月あたり67円減の6万4941円となります。厚生年金を受け取る標準世帯(夫が平均的な給与で40年働き、妻が専業主婦)では227円減の22万1277円となります。

年金給付を巡っては、財政を安定させるための給付抑制が必要との意見が多数を占めます。年金額を今より抑え、将来の年金額を確保するために、21年度からは現役世代の賃金が下がったときに高齢者が受け取る年金額も減らされることになります。

現在の公的年金制度の持続可能性を高めるためには、他にも年金の受給開始年齢の引き上げや、私的年金の充実などの大きな改革が避けて通れない状況となっています。いまの現役世代の皆様は、自分の年金は自分で作る時代が来た、と考えるのが賢明です。
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混迷する日本の社会保障改革(14)
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混迷する日本の社会保障改革(14)

<前回より>

年金支給額の上昇をおさえる「マクロ経済スライド」を強化する国民年金法改正案は11月29日午後の衆院本会議で、与党などの賛成多数で可決されました。

今回の年金法改正案には、現役世代の将来の年金受給水準を維持するため、賃金の変動に合わせて年金額を改定する仕組みが盛り込まれています。物価が上昇しても賃金が下がり、年金額も下がる可能性があるため、野党は「年金カット法案」と批判していますが、新ルールは年金制度の持続可能性を高めるために必要な方策の一つと言えます。

公的年金は毎年の物価や現役世代の賃金の変動に合わせて、支給額を改定しています。これまでは物価よりも賃金が下がった場合には、原則として物価分だけしか支給額を減らさない、といった仕組みになっていました。

新ルールでは、賃金が減るならばそれだけ現役世代が苦しくなり、年金制度を支える力も弱まるので、賃金が減った分と同じだけ年金も減ります。さらに今回の法案には、年金受給者の増加や現役世代の減少に合わせて、年金支給額を毎年小刻みに切り下げていく「マクロ経済スライド」と呼ばれる仕組みの見直しも盛り込まれています。

内閣府調査によると、マクロ経済スライドが発動された場合、公的年金をもらえる額から支払った額を差し引いた生涯収支を世代間で比べると1955年生まれ(61歳)世代の収支は数千円のプラスに縮小し、それ以下の世代の収支はマイナスになります。最も損をする1985年生まれ(31歳)は712万円の受け取り不足になります。

今回の対策のほかにも、制度の持続可能性を高めるためには、年金の受給開始年齢の見直しや、私的年金の充実などの大きな改革が避けて通れない状況となっています。いまの現役世代の皆様は、自分の年金は自分で作る時代が来た、と考えるのが賢明です。
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